今池中将湯

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開店:  15:00
閉店:  26:00(翌午前2:00)
定休日: 金
住所: 名古屋市今池5丁目12-21 (パチンコ屋裏)
電話:  052-733-2574

調査日:2004/10/11(月祝)

  今池といえばパチンコ屋さんや劇場、飲食店がひしめきあい、
癒しとは無縁の喧騒がイメージされるだろう。 しかし、そんな中にあったのだ。 
パチンコ屋さんの丁度裏手にあるビル銭湯。 ビルの名も中将ビル。

ご覧のような町並みで銭湯の気配は見つけにくい。 環状線から1本東に入り、ダイエーが
ある通り。名前もズバリ「ダイエー通り」である。 写真中央の白っぽくクロスした造形の建物が
パチンコ店。その手前の道を左に入ると中将湯のある路地となる。

写真右手がパチンコ屋「スタジアム600」の裏。 正面に見える看板は、大衆演芸場の
「アカデミー劇場」。昭和レトロ気分に浸りたいならこちらもセットでよろしいかと。
車で通るのがキツいと思われるこの通りに中将湯はある。 「ゆ」のマークで
ここまでくれば発見は容易だ。

 銭湯の入り口の左右は飲食店にはさまれていて、上はマンション。 
ビル銭湯のゆえに、レトロファンとしては期待薄か、、と入ってみた。 
が、しかしである。侮ってはいけない。 レトロファンにも見所満載で、
外の喧騒とは打って変わって静かな時間が流れるレトロ銭湯なのだ。 

 入り口は2段構えになっており、外の暖簾をくぐって、奥にガラスの引き戸が2つ。
レトロ銭湯で見慣れた入り口が奥にあるのだ。 通路の正面が男湯、その右側が女湯。 
波状のスリガラスのはまった引き戸を開ける。 

 番台には感じのよいおばちゃんが迎えてくれる。 脱衣場を見てホッとした。 
木製のロッカー、天井扇、、、、 ビル銭湯なのにレトロ銭湯の要素がしっかり残っていて、
そして常連と思われる年配の方らが番台と語らっている。 

 番台の左側入り口面に金属に穴の空いた、名古屋銭湯定番タイプの下足箱、
その外側がトイレの小部屋、外壁側には木製のロッカー。
ロッカー中央はガラスではなく化粧板に文字が入る。 

 番台前にはドリンク冷蔵庫。メグミルク各種100円。 男女仕切りは鏡で、その前にコイン式ドライヤー。
番台前の10円の古いタイプは今は使われていない。 浴室寄りの20円のほうが現役だ。 
その奥には昔の常連客用の小さな入浴用具入れがあるが今は使われていないそうだ。 
浴室へ向かう緩衝地帯と男女仕切りの間にやけにスペースがある。 
これが実はこの建物の特徴の現れている面なのだ。(後述) 

 緩衝地帯は浴室側にのみトビラがあり、左右に流しがある。 外壁側にオフセットされている。 
桶が流しの上にいくつか積んであり、ケロリンや貝カミソリなど数種類の混在。 
引き戸を開け、浴室へ。 

 これは、、、昭和レトロファンならピンとくる造形である。 
おおきなアーチを描く柱の間の作りとそれを覆う細かいタイル、これが4浴室の4面にある。 
そして、男女仕切りは大抵は上部が繋がっているが、ここは完全に別室になっていてこの面にもアーチが。 
刈谷浴場などを連想してしまう。 
 天井はビル銭湯となっている為、四角錘型ではなく、ゆるい逆山で側面から湯気を逃がすもの。 
逆W型断面とでもいおうか。天井面は改装されたようでアルミになっている。 

 床面タイルや浴槽あたりは近代的な印象となっているが、浴室左右に並ぶ洗い場の
台になっている部分などは細かいタイルで時代を感じとることができる。
 カランは水とお湯の両方。 

 浴槽レイアウトは入ってすぐにセンター浴槽の白湯、そして突き当たり壁面に並ぶ大きく3つの浴槽。 
センターの白湯は温度がやや高めで東京的。 突き当たりのコンビは、外壁側から、気泡の寝湯で水枕付き、
その隣が背中に当たるジェット、寝湯とジェットの前には気泡が出ている。 その隣は同じ浴槽が一部繋がっていて
電気風呂になっている。 パワーはやや弱めでチビチビと心地よい程度。 
その隣は薬湯。 蛍光グリーンのなんだかなつかしい感じの入浴剤。こちらはややぬるめ。 
突き当たり壁面に並ぶレイアウトなど東京的かもしれない。 
入って左手の立ちシャワーは現在休止中の模様。 ボタンを押しても動作しないようになっている。 

 全体的に湯加減がしっかりとしており、湯の透明度も満足できるもの。カランやシャワーもOK。 
お客さんは穏やかな印象の方が多く(高齢の方が多かったせいだと思うが)まったりしていていい。 

 番台でおばちゃん(おばあちゃん、!?)からお話を伺うことができた。 
こちらの今池中将湯はなんと戦前から営業。 昭和2年からやっているそうだ。 
戦争で全てが焼けてなくなってしまったが、レンガでガッチリつくった浴室のみ残ったのだという。 
特徴的なアーチの間にはひょっとして、と思ったがやはりレンガがはまっているのだ。
表面のタイルの奥は4面赤レンガで、1尺程度の長さをもつレンガでしっかりつくってあり、
今のビルを建てるときにそれをそのまま残し、上からかぶせるようにビルが建っているのだ。 
なるほど、2重になっている入り口も、浴室のアーチも納得できるものだ。 

 かなり固いから、もしこのビル壊すときもレンガのほうが大変かもね、と笑って話してくれた。 
まさかこんなガヤガヤした街中にこんな穏やかな時間が流れ、そして時代を刻んだものが隠されていたとは。 
恐らく誰も気付かないであろう。 

 出張などで付近に宿をとった方なども使えると思う。
こちらは深夜2時までやっているので立ち寄ってみてはいかがだろうか。 
レトロファンも是非足を伸ばしてほしい。

 外に出たら外国の方と思われる数名の若い人達が「ゆ〜?」「オンセン!?」と珍しそうに語らっていた。
一風呂いかがですか?異国の方。

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