侘び寂びな銭湯アニメ「Nier_7」のモデルとなった実在の銭湯。
その物語の結末のように、、、荏の花湯に時は流れ、、
【廃業】
<DATA> 【営業当時】 開店: 16:00 閉店: 23:00 定休日:第1,3,5の月曜日 住所: 東京都品川区旗の台2-4-4 電話: 03-3783-3573 |
調査日:2003/05/03(土)
東京の銭湯。 東急池上線、旗の台駅を昭和大病院側の出口で下車。
駅前商店街を北東にすすむとあるのがこの銭湯だ。 残念ながら廃業してしまった。
このようなカンジで周囲は今時の町並みで、時代に飲み込まれて消えてゆくようだ。
探すのもちょっと苦労した。 名古屋人で土地感がないのもあるが、煙突が見つけられなかったのだ。
アニメ「Nier_7」(ニア・アンダーセブン)の舞台となった銭湯である。
個人的にこの作品が好きだ。 アニメの舞台が銭湯で、ケロリン桶や様々な銭湯描写、そしてギャグアニメなのに
なにか侘び、寂びの要素がある。貧乏予備校生の少女と、同じく貧乏な居候の宇宙人、そして銭湯の住人の何気ない毎日を
描いた作品である。
物語の中では「荏の花温泉」ではなく「荏の花湯」となっているが、その劇中設定は
時代の流れに抗えず、ひっそりと終わりを迎えようとしている銭湯として描かれている。
劇中で経営難に陥っており、譲渡先からの打診など我々銭湯ファンが恐れる「廃業」という言葉が、
登場人物らにも重くのしかかっていた。 ギャグアニメなので余計に痛く見えたりする。
ちょっと哀愁漂ってしまうが、実物がかなりそのままなのである。 残念ながらしばらく前に実物も本当に廃業してしまい、しばらく前には戸に張られていた「休業のお知らせ」もご覧のようにはがされていた。
ここの入り口は典型的な東京銭湯で唐破風で、懸魚(げぎょ)は天女の彫り物。
取材時には天女の彫り物につたがからみつこうとしていた。 多くの客を見守ってきた彼女も
時代にのみこまれてゆくようだ。 細部の細工も細かいのがわかる。
劇中でよくあったアングルではないだろうか。 この入り口におばあさんが花を飾るシーンなど
細かい演出だが、最後に花を、、と内心悟っていたようでもあった。
電柱がジャマである。 おそらくツタのはみ出している部分と、看板のある側の2つの出っ張りは
脱衣場から見える庭があった部分と思われる。(東京型銭湯はこの位置に庭、縁側があることが
多い。(コラム内のレイアウト図を参照のこと) 営業しているときに入ってみたかった、、、、
実際に名古屋の「〜温泉」という名前だけのものではなく、ここは本当に温泉だったそうだ。
裏手に道があるので裏にいってみる。ここも作品どおりのレイアウトだ。
ボイラーマンの「ヨシネン」がいそうな気配はない。 車がとめられているが、肝心なものがないのだ。
そう銭湯の命、煙突が撤去されもはや湯を沸かすことはできない。
通りがかりの犬の散歩をしているおばあさんが「ほら、もうあれがないだろ、、」と教えてくれた。
ちょっと残念総な声に聞こえた。 通っていたのだろうか。
ついでだったので近所にレトロな銭湯はないかと尋ねたところ、中原街道を渡った昭和大病院の横に
「にしき湯」という銭湯があるという。行って見たが入り口などが近代的に改装され、今回は入る気が起こらなかった。
釜場らしきコンクリートの部分から、屋根に木製の階段がとりつけられている。
ここから上ったりしたのだろうか。 劇中では二階の「まゆ子」の部屋から紐で上ったりしていたが。
今回たずねた荏の花温泉、、いまにも主人公たちが出てきそうな臨場感だった。
だが、もはやそこには人はいない。
劇中で主人公が、
確かに終わりがあるかもしれないが、どんな結末になるにせよ
最後まで一生懸命やって悔いのないように毎日を大切にしていきたい、、
そんな意味の言葉を、この銭湯の屋根の上で語るシーンが印象的だった。
実際ここを営んだ人達は満足して終わりをむかえることができたであろうか、、
今はひっそりとその営みがあった証として残っているだけだ。
どうしても実物をこの目で確認しておきたい人は急いだほうがほさそうだ。
東京という町は哀愁に付き合ってくれるほど時間の流れがゆっくりしていないのだ。
それがいいことなのかどうかなど考ええる暇もなく。
おまけ。 帰りにみつけた電球製作所!? なにかレトロなカンジの
お店だったので撮ってみました。 ここだけ荏の花商店街のようだ。
余談ですが、この銭湯のモデルとなった「Nier_7」は
ご家族でお楽しみいただける今時めずらしい、人畜無害な作品ですのでご覧になっていない方はどうぞ。
レンタルもあるようです。 ダルジットさんのお店「シャネパンジャヴ」は野方駅の近くに
実際にあるとのこと。 気になる熱心なニアファンの方はこちらもどうぞ。